最近、原田伊織著「官賊と幕臣たち~列強の日本侵略を防いだ徳川テクノクラート~」という本を読んだ。
この本は、幕末以前の史実を勝者の論理で上書きしたような官製歴史書やそれを踏襲した現代の教科書を良しとせず、誤った歴史教育に一石を投じるものとして論じている。
私は、学生のころから表面的な歴史の教科書が大嫌いで、この手の「逆説・日本史」や「日本史雑学」、「江戸庶民文化」といった本を好んで読んできたので、七割程度は既知のことであった。
しかし、単なる日本近代史論としてではなく、現代の政治と比較して読んでみると、如何に今の政治が国益そっちのけであるかが浮き彫りとなる。
いま森友学園問題が連日報道され、国会の予算委員会でも繰り返し取沙汰されている。
不透明な取引は質さねばならないが、この事ばかりにうつつを抜かし日本の国益を損ねるのは如何なものか?
米トランプ政権は早々にTPP離脱を表明し、次期通商代表は「農業分野で日本は第一の標的になる」と公然と言ってきた。
さて「官賊」に話を戻そう。
これまで野党はTPP反対などと国内世論を扇動し、与党は先の選挙で農業生産地の東北・北海道地方の重要な議席を多く失った。二国間協定のFTAの場合、もっと熾烈な交渉を強いられるのは目に見えていたのにである。
与党にとっては、農家に丁寧な説明を行い理解を求める努力が不足していたと言われれば反論の余地はないが、野党であるとはいえ見識ある政治家が結果として国益を損なう判断と行動をとったことは、もはや「官賊」といわずに何と言おう。
前述の本にこのようにある。
幕末期に西欧列強の恫喝外交に敢然と臨んだ徳川幕臣たちの心底にあったのは、「幕府が滅びても、国家を滅ぼすわけにはいかぬ」という見事な覚悟だった。
いまに置き換えれば、本来あるべき政治家の姿は「TPPによって農家から罵声を浴びせられても、日本の農業を外国に駆逐されるわけにはいかぬ」という覚悟だったであろう。
日本の農業、どこかで一線を引き、守ることができれば良いが。。。
この始末の評価は50年先にある。